「サルコぺニア研究始まる」(2013年4月16日)

☆ 健康あれ・これ 第122回
  「 サルコぺニア研究始まる 」
            健康科学総合センター健康開発部長 村本 あき子

 「サルコぺニア」という言葉を聞いたことがありますか?

 サルコぺニア(sarcopenia;筋肉減少症)とは、加齢に伴う骨格筋量の減少および筋力の低下をきたす病態であり、
生活体力、日常生活動作(注1)、生活の質の低下に関連し、要介護状態に陥る要因のひとつと考えられています。
 加齢のほかに、慢性的な炎症、悪性腫瘍や内分泌疾患、神経の変性、栄養状態の悪化、不活発な生活スタイルなど
が進行要因とされています。

 サルコぺニアの定義は1998年にBaumgartnerらによって提唱されましたが、長らく国際的な合意のないままでした。
2010年に、栄養学と老年医学に取り組む複数の欧州の機関から成るEuropean Working Group on Sarcopenia
 in Older People(EWGSOP)が統一した見解を示しました。
 それによると、「筋肉量の低下」と「筋肉機能(筋力または身体能力)の低下」の両方の存在を診断に用いること推奨し
ています。

 また、EWGSOPはサルコぺニアの判定方法として、歩行速度が0.8m/秒以下であるかどうかが目安になるとして
います。交通量によっても信号の時間は異なりますが、一般に横断歩道の青信号は歩行速度1.0m/秒で渡りきれる
ように設計されているため、短めの青信号で横断歩道を渡りきれない場合、サルコぺニアに該当する可能性が大きいこ
とになります。
 その上で、筋肉量を測定(二重エネルギーX線吸収測定法、生体インピーダンス解析等を用いて測定)し、筋肉量の低
下を確認します。
 歩行速度が基準より速い場合でも、握力の低下があれば筋肉量を測定し、判定に用います。

 サルコぺニアの有病率は、報告によって幅がありますが、60~70歳で約20%、80歳以上では50%を超えるとして
いるものもあります。
 わが国は、既に超高齢社会(注2)に突入していて、2060年には65歳以上人口が39.9%に、すなわち国民の2.5
人に1人は高齢者になると推計されています(平成24年版高齢社会白書)。その頃の社会を想像してみると・・・介護予
防が誰にとっても他人ごとではなく、待ったなしであることが分かります。

 健康で活動的に暮らせる期間をのばすためには、サルコぺニアの予防と改善が重要です。年齢を重ねることには誰も
逆らうことが出来ませんが、サルコぺニアを予防、改善する工夫は何かないのでしょうか。
 当センターではこれから、サルコぺニアの評価方法を検証するとともに、普段の食生活でどんなことに気をつけたらよ
いのか、筋量・筋力の向上にとどまらず、日常生活動作や生活の質が高まる運動内容はどんなものなのか、ということ
を調べていきます。


注1: 日常生活動作とは、食事・更衣・移動・排泄・整容・入浴など、生活を営  む上で不可欠な基本的行動を指します。
注2: 65歳以上の人口が総人口に占める割合が7%を超えると「高齢化社会」  、14%を超えると「高齢社会」、21%を
      超えると「超高齢社会」といい、日本は2007年に超高齢社会になっています(国勢調査結果より)。