「長寿化から生み出される新しい社会は?」(2013年7月1日)

☆ 健康あれ・これ 第127回
  「 長寿化から生み出される新しい社会は? 」
          あいち健康の森健康科学総合センター長
                あいち介護予防支援センター長      津下 一代

 平成22年度の70歳は、30年前の65歳、60年前の55歳よりも死亡率が低い。
 これは人口動態統計による年齢別死亡率のデータです。このような統計を待つまでもなく、親の世代、祖父母の世代と
比較して、長生きを実感できるようになりました。
 このような長寿化が、社会に新しい変化をもたらしています。


≪意識の変化と活動の場の広がり≫
 昭和60年、65歳以上が人口の10%を超えました。その25年後の平成22年には65歳以上は23.0%、75歳以上が
11.1%となりました。
 数年前にデンマークに行った時、市の高齢者センター長は「人口の10%までは社会で支えられるが、それ以上は財政的
にかなり厳しい」という話をされていましたが・・。
 わが国では「65歳以上は高齢者」という定義は時代にそぐわないと思えるほど、体も気持ちも若い人が多くなってきました。
退職後、子育て後に新しい生活にチャレンジしたり、これまで仕事で培ったノウハウを活用して社会貢献につなげたり。
 これからも若い人を支え、ますます活躍されることを期待したいです。

≪高齢者の社会参画を促す機器の開発や医療・予防≫
 高齢期になればほとんどの人がかかる白内障。昔は視力低下のため生活の制限を余儀なくされていましたが、現在は
眼内レンズの開発や安心して手術できる体制が整い、視力が保たれるようになりました。補聴器もずいぶん改良されまし
た。「補聴器が良くなったので、会議にでられるようになった」と大先輩が内緒話で教えてくれました。
 聴力、視力が低下すると情報収集しにくくなるため、外出に差し支えるだけでなく、本来その人が持っている能力を発揮
しにくくなります。高齢者の社会参加を妨げる障害を補う機器の開発はますますニーズが高くなることでしょう。身体状況
や生活の変化に合わせて調整可能な機器の開発が望まれます。
 また、生活習慣病対策だけでなく、関節障害や筋力低下を予防して活動性を維持するためのトレーニングは、将来の自
分へのプレゼントになるでしょう。

≪買い物、住宅、交通≫
 生きていくために大切なことは、食・住。90歳で一人暮らしになっても、自分で生きていくにはどんな準備をしておくとよい
のか、考えておいたほうがよいかもしれません。簡単な料理をつくれる能力はできればもっていたいもの。お弁当を配るサ
ービスも必要かもしれませんが、ご近所に安価で高齢者の体にあった食事を出してくれるお店があると楽しみも増えますね。
 公営住宅で3~4階に住んでいる人は、階下に降りるのが億劫なため、閉じこもりがちに。思い切って高齢者は1階へ、若
い人は上層階へと転居を促す仕組みをつくるとよいでしょう。高齢者は買い物に出やすく、若者は階段でメタボ対策。孤独
死を減らすためにも、すぐに取り掛かる必要があると思います。
 足の確保も必須です。交通事故防止のため現在は免許返納せざるをえないかもしれませんが、車にかわる安全な移動
手段を作ることで、高齢者が楽しく自立した生活を送れるようになります。

≪新しい地域づくり≫
 シニアボランティアが子供たちの身守りをする、子供たちが高齢者を少し手助けする。そんな動きが活発化する兆しがあ
ります。
 車いすの人のための自販機を見たとき、「困っていたら近くの人が買ってあげればよいのでは・・」と外国からの留学生に
いわれ、ハッとしたことがあります。何もかも機械に頼るのではなく、気軽に手伝いあえる社会が来るとよいのですが。コス
トがかからず、気持ちが温かくなる社会をどう作るのか、知恵の絞りどころです。