「経済問題を乗り超え 健康長寿を推進するためには?」(2013年8月1日)

☆ 健康あれ・これ 第129回
  「 経済問題を乗り超え 健康長寿を推進するためには? 」
          あいち健康の森健康科学総合センター長
                あいち介護予防支援センター長      津下 一代

 年金、医療、介護等の社会保障費の増大に関するニュースが聞かれない日はありません。最近の経済情勢には明るい兆しが
見えるものの、超高齢化社会の進展に伴う社会保障費の増大をどう乗り切るのか、重要な局面を迎えています。
 そんな折、自動車の街、デトロイト市が約2兆円の負債を抱えて財政破綻したニュースが飛び込んできました。繁栄していた時代
の年金・医療保険制度を継続したために、高コスト体質となったことが原因の一つとされています。財政難を克服すべく税金を引
き上げ、公共サービスの質と量を引き下げたのですが、このことが住民の流出につながり(人口180万人→70万人)、税収がか
えって減少、財政難に拍車をかけたと報道されています。公園の7割が閉鎖され、警官が4割削減されて治安が悪化するなど、財
政破たんの厳しい現状を知らされました。
 世界の歴史を振り返ると、炭鉱・貿易・工業化などで産業が急激に拡大した国では、その後、他国の追随や放漫経営などにより
大きな経済問題に見舞われる傾向のようです。

 愛知県は自動車関連産業に支えられており、全国的に見ても活力がある地域なのですが、今後も次世代のニーズを担う産業が
次々と生まれ育つよう、期待しています。私たちとしては、世界に先駆けて取り組んできた生活習慣病予防システムを海外にも知
ってもらい、新たな産業的価値を作り出せれば・・と思います。ちょうど北欧が「産業として」も、「観光資源として」も、福祉システム
を育成してきたように。
 現実的な路線としては、産業界の元気が続くために、働く人の健康確保を徹底して応援していくことがますます重要な課題となる
でしょう。経営者、産業保健と医療保険者が共同して健康づくり運動を推進し、高齢になっても働ける人を増やし、働ける環境を整
えることで活力アップが期待されます。親の介護のために離職せざるを得ない状況を減らすよう、「地域包括ケア」体制づくりも急を
要する課題です。高齢となった親世代が幸福に暮してくれていれば、安心して仕事にも取り組めるからです。

 愛知県は今後、他県よりも大きな高齢化の波がやってきます。高度経済成長のころ集団就職で多くの方が転入されたため、団塊
世代のピークが他県よりも高いのです。たとえば75歳以上人口について2010年、2020年、2030年と予測すると、福井県では
10.9万人、12.6万人、14.9万と20年間で4万人の増加(37%増)が予測されています。それに対し、愛知県は66.0万、
98.4万人、120万人と、54万人増(82%増)と非常に大きな変化が予測されています(国立社会保障・人口問題研究所「日本
の都道府県別将来推計人口」平成25年3月発表)。2030年の愛知県は、65歳以上が人口の27.6%(3~4人に1人)、75歳
以上が16.7%(6人に1人)の時代を迎えます。

 デトロイトのように破たんに追い込まれることなく、イギリスのサッチャー時代のような厳しすぎる医療制度改革で病に苦しむ人を
切り捨てることなく、日本らしい解を見つけることができるのでしょうか。
 健康づくりを意識してなるべく病気にならないようにすること、地域に愛着をもって助け合う文化を大切にすることは、一人ひとりが
すぐにでも取り組めそうなことです。2030年の75歳以上人口割合は2000年時の65歳以上人口割合とほぼ同程度です。10歳
くらい体力年齢が若い高齢者が増えていれば、あまり問題は大きくないというわけです。
 社会としては、超高齢社会に適した生活環境を整えること、医療費が高いために治療中断に追い込まれないよう、経済性も考慮
した医療提供体制をつくることが重要と考えています。