「効果が出る必要最小限の目標」(2013年11月16日)

☆ 健康あれ・これ 第136回
  「 効果が出る必要最小限の目標 」
            健康科学総合センター健康開発部長 村本 あき子

 健康診断結果に「体重コントロールが必要」と書かれていたら、具体的にどれくらい減量したらよいのでしょう?健康障害の改善を期待できる「必要最小限の目標」を知りたくて研究を始めました。

 これまでになされた海外の研究報告をみると、血糖高値(境界型)であった人を対象とし、減量による糖尿病発症抑制効果を調べたものでは5-7%以上の減量が効果的(文献1、2)、5-10%の減量でコレステロールや中性脂肪の値が改善した(文献3)などの結果から、減量目標は5-10%としているものが多いようです。

 津下センター長が研究代表者を務める厚生労働科学研究については、これまでにも当コラムで何度かご紹介してきましたが、今回は「肥満症」に該当し特定保健指導(積極的支援)をうけた約3500人を対象とし検討しました。
 「肥満症」とは、BMI(注:)25以上で、高血圧、脂質異常、血糖高値、高尿酸血症、脂肪肝等を示し、その予防・治療に減量が必要である病態のことをいいます。

 対象者を1年後までの体重減少率により1%ごとに分類し、翌年の健診結果を用いて血圧、脂質、血糖といった検査値の変化をみると、体重減少率が大きくなればなるほど改善は明らかとなり、確かに5%以上体重が減ったグループでは大きな改善がみられました。
 しかし、2%減量達成者は全体の43.4%、3%は全体の33.3%、4%だと25.8%、5%は19.6%・・・と、減量幅が大きくなるにつれて、達成できる人は少なくなります。

 「必要最小限の目標」を明らかにするために、体重が変化しなかったグループ(翌年までの体重変化が±1%)と比較して、何%以上であれば検査項目が明らかに改善するか検討したところ、3%以上減量していたグループで11の検査項目(収縮期血圧、拡張期血圧、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、空腹時血糖値、HbA1c、尿酸値、AST、ALT、γ-GTP)すべてにおいて改善がみられました。

 3%減量であれば3人に1人が成功する、という実現可能性を考えても、日本人の肥満症における1年後の減量目標として「今の体重の3%」が目安になると考えられます。

 何から取り組むかは人それぞれ。実際に、日ごろの歩行速度が速くなった、早食いをしなくなった、お酒を飲む頻度を減らした・・・さまざまな工夫で減
量は成功します。
 興味深いのは、血圧は明らかな体重減少がないグループでも低下がみられたこと。はっきりと体重が減ってくる前に、食事についての意識が高まったことによって塩分摂取量が減ったり、運動習慣のなかった人が支援をきっかけに運動を始めたことなどの効果が血圧に表れたのではないかと考えています。
 それほど大それた目標ではなく、日々の心がけによる小さな変化で健康状態が改善する、という結果に励まされました。

  文献1.Tuomilehto J.N Engl J Med 2001; 344: 1343-1350.
  文献2.Knowler WC.N Engl J Med 2002; 346: 393-403.
  文献3.Wadden TA.Obes Res 1999; 2: 170-178

 注:BMI(Body Mass Index)
  :体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算される体格指数で、日本人の場合は25以上を「肥満」と診断します。