「社会のリフォーム、安心して楽しく暮らせるまちをつくれるか!?」(2013年12月1日)

☆ 健康あれ・これ 第137回
  「社会のリフォーム、安心して楽しく暮らせるまちをつくれるか!?」
          あいち健康の森健康科学総合センター長
                あいち介護予防支援センター長      津下 一代

 自宅周辺を散策すると、建設中の集合住宅が多いことに驚きます。マンションではなく、高齢者向けの住宅や介護施設です。高齢者の急増期を迎え、急ピッチでまちが変化しています。
 平成23年と25年を比較すると、愛知県では介護老人福祉施設が211か所から226か所へ、介護老人保健施設が166か所から188か所へと、あわせて37か所増加しています。また平成23年から始まった「サービス付高齢者住宅」は、この2年間で150棟5,000戸以上増加し、現在建設中の物件が多くあります。全国的にみると大阪、福岡、関東圏など、都市部で多く建設されているようです。
 経済成長期に都市部に集まって産業を支えた人々が高齢期を迎える時期であることや、過疎地域では支え手の減少から自立した生活を営むことが困難となり、都市への移住が進んできていることがその要因だと考えられます。
 住み慣れたわが家を離れることは大きなつらい決断ではありますが、命と生活を守るための移住は人類が最古から選択してきた道です。移住先での新しい生活が充実したものになるよう、受け入れ側の態勢づくりも急がねばなりません。地域住民との新たな人間関係づくりがスムーズにいくよう、あたたかく迎え入れたいものです。

 ところで、先日講演の準備をしていて、びっくりしたことがあります。山林地域や島しょ地域では高齢化が進み、過疎が進行している、そんな常識を打ち破る統計データです。
 東京都で最も若いまちは、都心部中央区や千代田区ではなく、なんと世界自然遺産の小笠原村でした。65歳以上の割合は東京都全体では20.4%に対し小笠原村では9.2%。75歳以上割合は都全体の9.4%に対し、小笠原村では3.7%。圧倒的に高齢者数が少ないのです。
 この理由として、昭和43年の返還以降も高齢者の入所施設がなく、介護を必要とする高齢者はやむなく島を離れ、内地の介護施設に入所していたとのことでした(村診療所HP)。このことから、高齢化率が高いということは、高齢者が住み続けられる環境があることの裏返しであることに気づかされました。
 一方、小笠原村のすごさは若い人の増加です。人口が最も多いのは40歳前後で、15歳未満の子ども人口の割合も15%と高く、少子化はどこ吹く風!? 観光をはじめとするさまざまな産業の活性化により、若い人をひきつける町、定住できる町になってきたのだそうです。
 そのようななか、平成23年に高齢者の入所施設が整備され、安心して生活できる環境づくりが進んでいるとのこと。働く人が増え、町が活性化すれば、お年寄りになっても住み慣れた島の施設ですみ続けることが可能になるかもしれない、そんな期待感を持たせます。

 愛知県は自然豊かな地域と都市部の両者を兼ね備える県です。現在は若い人が離れ、過疎化が進行している地域も、第二東名などの交通網の進化や山林な
らではの産業の展開が可能となれば、若い世代の流入と子育てが活性化することが期待されます。うつ病が増えてきている現代社会の解決策として、第一次
産業への回帰も多くの人の心をとらえています。
 高齢者問題を考えるときに高齢者層のことだけ考えるのではなく、産業構造や人口構造にも留意すること、地域間移動なども含めて安心して暮らせる仕組みづくりが必要であると思います。さらに、情報も少なく慣れない第一次産業に、若い人が関心をもつための教育やしくみの必要性にも思いをいたらせます。
 社会全体のリフォームの時期。各自治体には将来を展望したしっかりとした理念と行動力が求められています。