たばこ価格の大幅アップは一石多鳥(2006年2月16日)

「たばこ価格の大幅アップは一石多鳥」

           あいち健康の森健康科学総合センター長 富永祐民

 わが国のたばこ価格は1箱270円から300円程度です。1箱で1日に2
0回も楽しめる嗜好品が1杯のコーヒと同等か安いのは不合理ではないでしょ
うか。欧米先進国ではたばこ価格は1箱500円から800円程度ですから、
わが国のたばこ価格は異常に安く抑えられています。安いたばこ価格が未成年
者の喫煙を助長している可能性もあります。

マイルドセブンの場合、1977年に新発売された当時は150円でしたが、
1980年に専売公社が民営化され、たばこ産業株式会社になった際に180
円に値上げされ、その後小刻みに5回値上げされ、やっと270円になってい
ます。昨年12月15日に決定された与党の税制調査会では児童手当の拡大の
予算の捻出のために、わずか1本当たり1円(1箱で20円)の値上げにとど
め、大幅な価格アップ(一箱500円)は見送られてしまいました。

 昨年2月27日に発効した「たばこ規制枠組み条約」では、第6条でたばこ
の需要を減少させるために、たばこ価格と課税額をアップするようにと定めら
れていますが、1箱当たりわずか20円程度の値上げでは禁煙のきっかけには
なりそうもありませんし、未成年者の喫煙にブレーキがかかりそうにありませ
ん。わが国の現在のたばこ価格を欧米先進国並みに倍増して500円程度にす
ると、約40%の喫煙者が禁煙するつもりだと言っていますが、たばこの依存
性のために実際に禁煙する人は20%前後にとどまると推計されています。

たばこ価格が1箱500円程度になると、未成年者の喫煙は大幅に抑制され
ることは明白です。たばこ業界では未成年者の喫煙防止のために、800億円
以上の費用をかけて2008年から成人だけに“たばこカード”を発行し、こ
のカードを保持していない場合は自動販売機でたばこを買えないようにする計
画を立てていますが、そのような巨費を投じなくても、たばこ価格を大幅に上
げするだけで未成年者の喫煙を大幅に抑止することができるのです。
 
 現在のたばこ価格の270円を500円程度に値上げすると、例え一部の喫
煙者が禁煙、節煙したとしても、たばこの税収額は約3兆2500億円に達し、
約7400億円の税収増になると推計されています。この税収の一部を生活習
慣病の予防対策に充てれば、さらに多額の医療費や介護費の節減が可能となり
ます。また、たばこ価格の大幅値上げを契機として禁煙する人が増えれば(一
箱の価格を500円にした場合、約600万人の禁煙者が見込まれます)、た
ばこ病による医療費の節約、労働損失の減少、健康寿命の延伸にも役立ちます。

 さらに、前述のように、たばこ価格の上昇により未成年者の喫煙率は著明に
低下することが期待されます。たばこ価格の大幅値上げはまさに“一石多鳥”
と言えるのではないでしょうか。

 わが国では世界に例を見ない「たばこ事業法」が制定されており、第1条に
たばこ事業の健全な育成(たばこ税収の確保)がうたわれていますが、たばこ
価格を上げることにより、税収増が見込まれるので、法律の趣旨にも合致して
いるといえます。葉たばこ生産農家に対しては税収の一部を転作のための補助
金に廻せばよいと思いますし、たばこ小売業者に対しては販売価格に対するマ
ージンの比率を変えないようにすれば、少なく売って多くのマージンを得る計
算になり、むしろ増収になる可能性が大きいのです。

 このように、たばこ価格の大幅増税はまさに「一石多鳥」と言えるのではな
いでしょうか。喫煙による超過医療費だけでも1兆3000億円と推計されて
おり、増加しつつある医療費を抑えるためにも、また未成年者の喫煙を防止す
るためにも、たばこの大幅増税は早急に実行すべきだと思います。厚生労働省、
医師会・歯科医師会・薬剤師会、その他の多くの保健医療団体や各種の学会で
もたばこ対策の強化の一環として、たばこ価格の値上げとそれに伴う増税収を
保健・福祉対策に充てることを要望しています。