“マーガリンよりバターを”(2006年5月16日)

「“マーガリンよりバターを”」

健康科学総合センター長 富永祐民

 豚肉、牛肉、牛乳、鶏卵などの動物性脂肪の多い食品の過剰摂取は血清コレ
ステロール値を上げ、心筋梗塞や狭心症などの動脈硬化性心疾患の危険性を高
めるので、控えめにする必要があると言われてきました。これに反して植物性
脂肪は血清コレステロール値を上げないので、動物性脂肪の摂取を減らして、
植物性脂肪で置き換えた方がよいと言われてきました。そこで、トーストにつ
けるバターも植物油でできたマーガリンに変えるべきだと言われてきました。

 しかし、名古屋市立大学名誉教授(現金城学院大学薬学部教授)の奥山治美
先生は“マーガリンより、バターの方が安全である”と主張されているのです。

その根拠としては、昔は高コレステロール血症は動脈硬化性心疾患の危険因
子であると一方的に危険視されていましたが、その後の疫学的研究から血清コ
レステロール値が低い場合はがんリスクが高くなり、死亡率も高くなること、
紅花油やひまわり油に多量に含まれているn-6系のリノール酸は摂りすぎる
とアルファリノレン酸の相対的な不足をもたらし、アラキドン酸代謝経路を介
して炎症性疾患、アレルギー性疾患、心疾患、がんなどを増やす可能性がある
こと、脳卒中ラットを用いた動物実験からもリノール酸やオレイン酸が多い食
用油では寿命短縮作用がある可能性があること、などがあげられています。

 逆に、動物実験で延命効果が証明されたのはシソ油(エゴマ油)、DHA魚
油などです。シソ油(エゴマ油)にはDHAと同じく、n-3系のアルファリ
ノレン酸が多量に含まれています。意外なのは1価不飽和脂肪酸のオレイン酸
が多量に含まれているオリーブ油で、健康によい食品と言われていましたが、
奥山教授らの動物実験からは寿命を短縮する可能性があることが示唆されてい
ます。地中海食は健康食と言われ、オリーブ油と魚が代表的ですが、むしろオ
リーブ油より魚が健康によい結果をもたらしていた可能性があります。

 このような実験結果や介入試験の結果から奥山教授は、1)血清コレステロ
ール値を下げる薬物療法や食事療法は40-50歳以上の一般集団には不適で、
血清コレステロール値が高い方が長生きしている、2)n-6系のリノール酸
の過剰摂取は心疾患、がん、アレルギー性疾患、炎症性疾患を増やす可能性が
ある、3)数種の植物製油と水素添加した硬化油は動物には有害であり、長期
的には食用に不適で、“マーガリンよりバターを”と結論づけておられます。

 上記は奥山教授が去る平成18年1月24日に名古屋市内で開催された第1
6回日本疫学会学術集会のランチョンセミナーで講演された内容の要旨ですが、
奥山教授の学説をどのように受け入れるべきでしょうか?ちなみに、筆者は以
前から奥山教授の研究成果を聞いていましたし、血清コレステロール値を下げ
ると発がんリスクが高くなるという介入試験の結果や高齢者では血清コレステ
ロール値が少し高目の人、肥満傾向の人が長生きしていることを知っていまし
たので、最近はトーストにはマーガリンを使わず、少量のバターを使っていま
す。

 奥山教授らの実験ではオリーブ油は寿命を短縮させる可能性があり、食用に
不適のレッテルが貼られていますが、オリーブ油にはオレイン酸の他にポリフ
ェノールも多量に含まれていますので、最近は少し控えめにしながらも使用し
ています。また、奥山教授お勧めのシソ油(エゴマ油)にはn-3系のアルフ
ァリノレン酸が多量に含まれており、健康によいと思いますが、少し高価なの
が欠点です。