喫煙習慣と歯の保有本数(2006年6月1日)

「喫煙習慣と歯の保有本数」

           健康科学総合センター長 富永祐民

 5月31日は世界禁煙デー、6月4日は虫歯予防デーですから、今回は喫煙
と歯の関係について触れたいと思います。これまでに内外で行われた多くの疫
学的研究から、喫煙者では歯周病にかかりやすいことが知られています。歯周
病は初期では歯周炎の状態ですが、徐々に歯と歯ぐきの間のポケットが深くな
り、食物残渣や膿がたまり、歯がぐらつき始め、やがて歯が抜けてしまいます。

 あいち健康プラザでは総合健診の受診者には歯科健診も行っています。19
88年から2005年までに歯科検診を受けた6,265人(男性3,971
人、女性2,294人)の受診者の歯の保有数を性・年齢・喫煙習慣別に比較
してみますと、45歳頃までは喫煙者と非喫煙者の歯の保有本数に差は見られ
ませんが、45歳を過ぎると喫煙者の歯の保有本数が徐々に少なくなり、60
-64歳になると、非喫煙男性では平均して、24本の歯を保有しているのに
喫煙者では21本となり、非喫煙者より3本少なくなっています。
 
 女性では非喫煙者で23本、喫煙者で17本で、喫煙女性では6本も少なく
なっています。男女平均では60歳を過ぎる頃には喫煙者では非喫煙者より約
5本歯の保有数が少なくなっています。65歳以降では年齢が進むにつれ、非
喫煙者の歯の保有本数も減少し、喫煙者と非喫煙者の歯の保有本数の差は小さ
くなっています。このことから喫煙者では非喫煙者に比べて老化が早く進行し
ているといえます。

 歯周病の原因は喫煙だけではありません。歯のブラッシングの程度、細菌感
染、免疫、老化、遺伝などの影響も考えられますが、喫煙により歯ぐきの血液
循環が悪くなること、免疫能が低下することなどにより歯周病にかかりやすく、
進行しやすいことも十分考えられます。喫煙者でも禁煙し、歯のブラッシング
を丹念に行うと歯周病の進行はくい止められ、軽快することも報告されていま
す。

 歯の本数が少なくなると、食べ物も十分噛めなくなり、食道や胃にも悪い影
響を与えます。「8020」運動は80歳で20本の歯を残そうという運動で
す。途中経過として、「6024」、つまり、60歳で24本の歯を残すこと
を中間目標にしていますが、60歳から64歳の非喫煙男性の歯の保有本数は
24本ですから、非喫煙男性ではこの目標を達成しています。女性では妊娠、
出産の影響からか、男性より歯の保有本数が少なくなっています。

 近年、成人男性の喫煙率は著明に低下していますが、若い女性の喫煙率は高
くなっています。老若男女にかかわらず、喫煙すると不快な口臭のみでなく、
歯ぐきや歯の着色、歯周病にかかりやすく、中高年になると歯の保有本数が少
なくなり、食事も楽しめず、健康にもよくありません。
 
 私は40歳頃に歯痛で歯科医を受診した時、「歯周病もありますね。このま
まだと50歳か60歳位までに歯が抜けてしまって入れ歯になりますよ」と脅
されました。それはまずいと思い、その後は定期的(60歳頃までは2年に1
回位、60歳以降では毎年1回)かかりつけの歯科医院を受診し、歯石除去、
虫歯の治療などをしてもらい、歯のブラッシングも毎日朝食後と寝る前に行い、
週に1回は歯間ブラシで歯間の清掃も行ってきました。

 おかげで68歳の現在でも歯は1本も抜けておらず(28本)、親知らずも
上下左右に大臼歯の奥に生えていますので、32本あることになります。「8
020」の「20」は楽勝できると思いますが、「80」の方はどうなるかわ
かりません。もちろん、私はたばこは吸っていません。