肥満に関するこぼれ話(2006年10月1日)

「肥満に関するこぼれ話」

           健康科学総合センター長 富永祐民

10月は「天高く馬肥ゆる頃」で、人間も肥りやすい時期なので、今回は
肥満と肥満防止に関する話を二、三紹介致します。

【早食いの人は肥りやすい】
 名古屋大学大学院医学研究科の豊島英明教授らの研究グループは愛知県内の
地方自治体の職員を対象とした健康と生活習慣に関するアンケート調査を行い、
早食いの人は太りやすいことを認め、日本疫学会の学会誌に発表しています。
この研究では食事の早さは自己判断により、非常に遅い、比較的遅い、普通、比
較的早い、非常に早い、の5つのカテゴリーに分けています。
肥満度はBMI(キログラム単位の体重をメートル単位の身長の2乗で割った数値)
で示しています。BMIの正常範囲は18.5以上、25未満です。
18.5未満は痩せすぎ、25以上は肥満(30以上は高度肥満)です。男女とも食
事時間が早い人ほど肥満度が高くなっています。男性の場合、食事の早さが「非
常に遅い」群ではBMIは21.8でしたが、食事の早さが早くなるにつれ、BMIは増
加し、「非常に早い」群では24.4になっていました。体重でみると、「非常に遅い」
群では61.5kgでしたが、BMIと同じように、食事の取り方が早くなるにつれ体重
は増加し、「非常に早い」群では70.1kgとなり、10kg近くも増加しています。
女性では各カテゴリーのBMIと体重は男性より少し低くなっていますが、
男性と同じように、食事摂取が早くなるにつれ、BMIと体重が増加していました。
 早食いの人が肥りやすい理由として、早食いの人では血糖値が上昇して空腹感
が低下する(ブレーキがかかる)までに食べ過ぎてしまうこと、早食いにより急に血
糖値が上がるので、インスリンの分泌量が増え、血液中の脂肪酸が皮下脂肪とし
て沈着しやすいことなどがあげられています。逆に、ゆっくり食べる人では食事中
に血糖値が高くなり、空腹感が消えるので、食べ過ぎをせず、肥りすぎないものと
みられています。

 
【深夜の飽食、肥満の元】
 日本大学薬学部衛生学の榛葉茂紀助教授らはBAL1というたんぱく質が夜の
暗い時、特に深夜に増加し、「脂肪をため込みなさい」という指令を送り、深夜に
飲食をすると脂肪の蓄積が起こりやすくなるので、夕食時間を遅くしすぎないよ
うにすることを勧めています。これらはまだ動物実験の段階ですが、肥満防止の
ためには、夕食は低カロリーにし、19時頃までに摂ることを勧めています。


【体重増加防止ワクチン】
米国カリフォルニア州のスクリプス研究所と大阪市立大学の研究チームが7月
31日の米科学アカデミー紀要(電子版)に、脂肪分解を抑えるグレリンという
ホルモンの働きを抑える物質のワクチンを注射すると、動物の体重増加が少な
くなったと報告しています。しかし、これもまだ動物実験の段階であり、このワク
チンが人の肥満の防止に応用できるのは先の話です。当面は肥満防止のため
には、ゆっくり食事をし、夜遅くに飽食しないことが勧められます。もちろん、運
動も重要です。