生活習慣と医療費(2006年10月17日)

「生活習慣と医療費」

           健康科学総合センター長 富永祐民

 国民総医療費は年々増加し、平成17年度には32兆4千億円に達しています。
国民1人当たりの医療費は25万4千円ですが、これは全年齢の平均値で、70歳
以上では75万5千円となっていす。したがいまして、高齢者人口が増えると自動
的に国民総医療費は増えてしまいます。厚生労働省は増加し続ける医療費を少し
でも抑制するために、現在増加しつつあるメタボリック症候群とその予備群を中心
に、まず健診と生活習慣のチェックを行い、その結果に基づいてメリハリの効いた
適切な保健指導(特に生活習慣の改善)を行い、特に糖尿病とその合併症、脳血
管障害、心筋梗塞などの予防・悪化防止により、医療費の増加に歯止めをかけよ
うとしています。ちなみに、現在全国に約740万人の糖尿病患者がいると推計さ
れていますが、実際に医療機関を受診しているのは約半数(約370万人)で、そ
の内の約6割の患者では糖尿病が適切にコントロールされていません。糖尿病に
対する直接医療費は約1兆円ですが、これに糖尿病の合併症に対する医療費約
1兆5千億円を加えると約2兆5千億円になります。糖尿病が悪化して腎不全の状
態になると、腎透析が必要となり、年間の医療費は600万円に達します。その他、
網膜剥離や眼底出血により失明するとさらに医療費が増えるばかりでなく、生活の
質も低下します。

 東北大学大学院医学研究科の辻一郎教授らは宮城県大崎保健所管内に住む国
民保険(国保)加入者約5万人を対象として、9年間追跡し、生活習慣と医療費の関
係を調べています。生活習慣はアンケート調査で調べ、喫煙、肥満、運動不足を取
り上げています。その結果、喫煙、肥満、運動不足のいずれもが無かった対象者の
医療費が最も安く、これを1(基準)とすると、喫煙者の医療費は10%高くなっており、
肥満者、運動不足の対象者の医療費はそれぞれ7%増加していました。喫煙と肥
満と運動不足が3つそろった対象者の医療費は最も高く(44%増)なっていました。
この集団では生活習慣が悪い人(喫煙、肥満、運動不足のいずれかがあるか、そ
の2つ以上、または3つ以上ある人)の医療費は生活習慣のよい人に比べて平均し
て医療費が約15%高くなっています。もし、生活習慣の悪い人が生活習慣を改善
すると約15%(32兆円の内の約5兆円!)の医療費を節約できることになります。

 平成20年4月から実施される抜本的な医療制度改正では医療保険者(国保、健
康保険、共済保険など全ての保険者)が本人と家族の健診と保健指導(=生活習
慣の改善)の責任を負い、これを実行し、さらにレセプトと突合して医療費の節約効
果を評価することも義務づけられます。5年後の平成25年度からは、医療費の節
減が不十分であった保険組合はより多額(標準に比べて最高+10%)の高齢者
医療保険に対する支援金を払わなければいけなくなります。
これは一種の罰則です。逆に医療費の節減ができた保険組合は支援金の額が少
なくなります(最高10%減額)。これは一種の報奨金になります。平成18年度後
半から平成19年度にかけて、それぞれの保険者は医療制度改革に向けての態
勢を整えなければいけません。まるで明治維新のような医療・保健制度の変革に
対応するため、国保を運営する市町村も企業の健保組合も大わらわです。