健康づくりのための運動指針2006(2006年11月1日)

「健康づくりのための運動指針2006」

           健康科学総合センター長 富永祐民

 厚生労働省は昨年、健康づくりと生活習慣病予防のために、「1に運動、2
に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」という新しい標語を作りました。しかし、
このようなかけ声だけでは運動を推進できませんので、具体的でわかりやす
い運動指針を策定することにしました。そこで厚生労働省では昨年8月に「運
動所要量・運動指針策定検討会」を設置し、約1年をかけて、運動所要量を
決め、これに基づいて、具体的でわかりやすい運動指針を作成しました。
今回は本年7月に公表された「健康づくりのための運動指針2006」と題する
報告書のさわりを紹介したいと思います。

 まず運動所要量については膨大な文献レビューに基づいて、1週間の運動
所要量を23メッツ・時以上(その内4メッツ・時以上は中強度以上の運動を
含める)としました。「メッツ」とは身体活動強度を示す単位で、国際的に広く
使われています。1メッツは寝ころんで安静にしている時の運動強度であり、
これを尺度として身体活動時の運動強度を示します。時速4キロ(分速67m)
程度の普通歩行は3メッツであり、時速6キロ(分速100m)の速歩になると
4メッツ、ジョギングでは7メッツ、ランニングでは10メッツです。
運動指針では3メッツから15メッツまでの各段階に該当する生活活動と運動
を詳しく例示しています。

 「身体活動量」はメッツ・時(身体活動強度と時間を掛け合わせたもの)で示
されますが、検討会ではこれを「エクササイズ」と呼ぶことにしました。しかし、
「メッツ・時」は短い言葉ですし、「エクササイズ」は運動を示す言葉であっても
内容がわかりませんので、あまり普及しないかも知れません。
 一方、身体活動によるエネルギーの消費量は普通、「キロカロリー」で示さ
れていますが、運動指針ではキロカロリーを使っていません。これは同じ身体
活動強度でも体重によって消費カロリーが異なるからです。消費カロリーは、
身体活動量(メッツ・時)X 体重(キロ)X 1.05)の換算式で計算されます。
例えば、体重が60(50)キロの人なら、1メッツ・時の身体活動により約60(
50)キロカロリーのエネルギーを消費することになります。つまり、体重の大
きい人では少しの運動でも消費するエネルギーは体重に比例して大きくなる
のです。例えば、体重が40キロの人と80キロの人では同じ運動をしても消
費エネルギーは80キロの人が40キロの人の2倍になるのです。

 さて、一週間に23メッツ・時以上の身体活動が必要となると、1日平均で
3.3メッツ・時以上となります。これは普通歩行(3メッツ)なら毎日66分以上、
速歩(4メッツ)なら45分以上の歩行に相当します。体重60キロの人なら20
8キロカロリー(3.3X 60 X 1.05)のエネルギーを運動で消費する必要
があります。
 摂取エネルギーが消費エネルギーを上回れば余分のエネルギーは脂肪とし
て貯えられ、体重は増加します。体重を1キロ(腹囲を1センチ)減らそうとする
と、7000キロカロリーの運動か食事制限が必要です。運動で7000キロカロ
リーを消費するのは容易なことではありません。1ヶ月で体重を1キロ(腹囲を
1センチ)減らすには、毎日7000/30=233キロカロリー相当の運動をする
か、食事で半分の116キロカロリー分減らし、運動で残り半分の116キロリー
(普通歩行なら約40分、速歩なら約30分)のエネルギーを消費する必要があ
ります。

 運動指針では性・年齢別に「体力」の標準も示しています。体力は3分間に
歩行できる距離と1分間に椅子から何回立ち上がれるかの回数で測定するこ
とにしていますが、ここでは詳細は省略いたします。
 なお、社会保険出版社(電話:03-3291-9841)は厚生労働省が公表した47
ページからなる膨大な運動指針の報告書を「エクササイズガイド」と題する8
ページのわかりやすいリーフレットにして発刊しています。