体重減少の目標は『サンサン』か『サンハチ』か(2006年11月16日)

「体重減少の目標は『サンサン』か『サンハチ』か」

           健康科学総合センター長 富永祐民

 前回のE-ニュースの本欄で、厚生労働省が本年7月に公表した「健康づ
くりのための運動指針2006」の概要を解説し、その中で「体重を1キロ(腹
囲を1センチ)減らそうとすると、7000キロカロリーの運動か食事制限が必
要である」ことを紹介しました。BMIが25以上、腹囲が85センチ以上(男性)、
90センチ以上(女性)の肥満者ではBMIが25以下、腹囲を85センチ以下
(男性)、90センチ以下(女性)に減らさないといけないと思っていても高度
肥満(BMIが30以上、腹囲はメタボリックシンドロームの基準を大きく上回
っている人)では、実現可能な中間目標を設定して体重減少、腹囲減少に
向けて努力することが現実的だと言えます。

 日本肥満学会(理事長:松澤佑次住友病院長)では去る10月26日に「肥
満症の人は食生活を改善し、運動し、体重を3キロ、ウエストを3センチ減
らす『サンサン運動』に取り組みましょう」と呼びかけました。これは臨床経験
から、糖尿病の一歩手前の人でも食事制限や運動で体重を5%減らせば、
ほとんど発症しないことがわかっているからです。例えば、BMIが30以上で、
腹囲もメタボリックシンドロームの基準を大きく上回っている人でも、ある程
度体重を減らせばそれなりの効果が期待でき、肥満解消へ一歩近づくことが
できるからです。同学会は「肥満症でない人は無理なダイエットをする必要は
ないが、現状維持に努めてほしい」としていますが、やせ過ぎの女性(BMI1
8.5以下)では“逆サンサン”(体重を3キロ、腹囲を3センチ増やす)が必要
ですね。

 筆者は過日、東京で開催された食育に関するあるシンポジュウムで、松澤
先生にお目にかかりました。控え室でお見受けしたところ、メタボリックシンド
ロームの提唱者の松澤先生の腹囲が明らかに基準を上回っているように見
えましたので、「先生はメタボリックシンドロームではないですか?」と冷やか
しましたところ、「そうです」と苦笑されました。しかし、さすがに松澤先生です。
夜はエアロバイクに乗り、リモコンを片手にテレビを見ながら40分漕がれる
そうです(消費エネルギーは200キロカロリー)。その結果、「汗びっしょりに
なりますが、シャワーを浴びれば爽快ですよ」と笑い飛ばされました。
どうやら松澤先生ご自身も『サンサン』(体重3キロ、腹囲3センチ減)を当面
の目標にされているようです。

 前述の食育シンポジュウムで服部栄養専門学校の服部幸慶先生にもお目
にかかりましたが、服部先生も以前は腹囲がやや大き過ぎたそうです。服部
先生のすごいところは、食事(+ワイン)は今まで通りにして、運動のみで、
具体的にはスクワットを1日に300回(朝、昼、夜各100回)、ハイヒップ(足
を後ろへ上げる)を50回続けて、3か月位で体重を8キロ、腹囲を6センチ
減らすことができたそうです。
 
 『サンハチ』は「運動を含めた8・8・8ダイエット」のことで、筑波大学人間総
合科学研究科の田中喜代治教授が提唱されているメタボリックシンドローム
克服法です。8・8・8は「体重を8キロ減らし、腹囲を8センチ縮め、8歳若返
りを目指す」ものです。摂取エネルギーの目標は、男性は1日1680キロカ
ロリー、女性は1200キロカロリーで、これまでに2300キロカロリー摂取し
ている男性なら620キロカロリー、2100キロカロリー摂取していた女性なら
900キロカロリー減らす必要があります。このペースを3か月続ければ10
キロ程度の減量が可能とのことです。これだけのカロリーを運動だけで減ら
すのは大変ですから、運動と食事制限をバランスよく組み合わせてじっくり
取り組む必要があります。

 余談ですが、過日中日劇場で森光子さん主演の放浪記を鑑賞しました。80
歳代半ばの森光子さんが放浪記の芝居の最後ででんぐり返りをするために、
毎日スクワットを80回実行されている話を聞いていましたが、森光子さんは
広い舞台を軽やかに動き回り、下肢を大きく上げるなど、若い女性の身のこ
なしをしておられました。森光子さんは田中教授の8歳若返りを遙かに超え
て、数十歳若い印象でした。森光子さんは最後のでんぐり返りも難なくこなさ
れ、あの調子では放浪記主演2000回も実現されるのではないかと思いまし
た。これも日頃のたゆまぬ体力作りの賜であると言えましょう。