御茶漬けでも食べ方次第で肥る!(2006年12月1日)

「御茶漬けでも食べ方次第で肥る!」

           健康科学総合センター長 富永祐民

 前号のE-ニュースの本欄で、「サン・サン」と「ハチ・サン」など、肥満を解消
する話を紹介しましたが、今号も肥満に関する話です。本欄の10月1日号で
肥満に関するこぼれ話を2,3紹介しました。すなわち、早食いの人は肥りやす
い、夕食時間が遅いと肥りやすいことを紹介しましたが、今回はお茶漬けを食
べても食べ方によっては肥ってしまうという滑稽な昔話です。
今年の5月15日付の中日新聞に、森村宗冬氏の「食べる日本史」の記事の中
に、宇治拾遺物語の「三条中納言、水飯の事」というマンガ付の面白い記事が
ありました。早速、詳しい話が知りたいと思い、図書館で宇治拾遺物語を借り、
「三条中納言水飯の事」の部分を読みました。原文は少しわかりにくいのです
が、現代語に翻訳するとリアル感が消えてしまいますから、古語の復習も兼ね
て我慢して読んでみて下さい。

 これも今は昔、三条中納言という人ありけり。三条右大臣の御子なり。才か
しこくて、もろこしの事、この世の事、みな知り給へり。心ばえかしこく、肝ふと
く、をしからだちて(押しが強くて)なんおはしける。笙の笛をなん極めて(上手
に)吹き給ける。長(身長)高く、大に太りてなんおはしける。
 ふとりのあまり、せめて(はなはだしく)苦しきまでに肥え給ければ、薬師(く
すし=医師)重秀を呼びて、「かく、いみじう肥るおばいかがせんとする。
立居などするが、身の重く、いみじう苦しきなり」との給えば、重秀申しやう、
「冬は湯漬け、夏は水漬けにて物を召すべしなり」と申しけり。
 そのままに召しけれど、ただ同じように肥ふとり給ければ、せんかたなくて、
又、重秀を召して、「いひしままにすれど、そのしるしもなし。水飯食て見せん」
との給いて、おのこども召すに、さぶらひ(侍)一人参りたれば、「例のように
水飯してもて来」といはれければ、しばしばかりありて、御台もて参るを見れば、
・・・中略・・・、中の御盤に白き干し瓜三寸ばかりに切て、十ばかり盛りたり。
又、すしあゆ(鮨にした鮎)のおせくくに(意味不明)ひろらか(平ら)なるが、尻
頭(尾頭つき)ばかり押して三十ばかり盛りたり。

・・・中略・・・

 鋺(金属製の碗)を給れば、かいに御ものをすくひつつ、高やかに盛り上げて、
そばに水をすこし入りて参らせたり。殿、・・・中略・・・、干し瓜を三きりばかり食
ひ切りて五六ばかり参りぬ。次に鮨を二きりばかり食切りて五六ばかりやすら
かに(むぞうさに)参りぬ。次に炊飯を引き寄せて、二たびばかり箸をまはし給
ふと見るほどに、おものみな失せぬ。又(もっと)とてさし給はす。
さて、二三度に、ひさげの物皆になれば(皆なくなったので)、又、提に入りても
て参る。秀重、「水飯をやくと(もっぱら)召すとも、このぢやうに(このように)召
さば、さらに御ふとりなをるべきにあらず」とて逃て去にけり。されば、いよいよ
相撲などのやうにてぞおはしける。

 三条中納言のお茶漬けにして食べても、たくさん食べれば肥ってしまうとい
う当たり前の話ですが、昔から上流階級では立ち居振舞いが苦しくなるほど
肥っていた人がいたことは驚きです。奈良時代、平安時代の上流階級のふく
よかな女性も栄養がよかったからだと思われます。薬師の重秀はダイエット
のために「(あまりカロリーの高い鮎鮨などを控えて、)あっさりしたお茶漬け
でも食べればよいでしょう」と言ったつもりが、同じ食べ物を“お茶漬けにした
だけ”であったので、ダイエットに成功しなかったという笑い話です。

 お茶漬けは曲者で、よく噛まずに流し込むことができますので、早食いと同
じように、血糖値が上がり空腹感が消えるまでにたくさん食べ過ぎるきらいが
あります。名古屋名物のひつまぶしも、2,3杯目をお茶かだし汁をかけて食
べると、苦もなく800kcal以上のうなぎ+ご飯をたべることができるので、要
注意です。