保健医療施設の敷地内禁煙(2006年12月16日)

「保健医療施設の敷地内禁煙」

           健康科学総合センター長 富永祐民

  最近、保健医療施設や学校で敷地内を禁煙にしているところが増えてきまし
た。当あいち健康プラザでも平成19年1月1日から敷地内を禁煙にすることに
しました。あいち健康プラザでは設立当初には1階のエレベーターホールと健康
開発館の地階に立派な喫煙室が設置されていました。職員用にもロッカールー
ムの一部が喫煙室として利用されていました。喫煙室が設置されたのは一歩前
進で、三段跳びのホップです。

 平成15年5月1日には健康増進法が施行され、同法の第25条において、
「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官
公庁施設、飲食店、その他多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを
利用する者について、受動喫煙を防止するために必要な措置を講じるように努
めなければならない」と定められています。閉鎖された空間で、強制換気をして
外部へたばこ煙が流れ出ないようにするためには、喫煙室の設置場所と換気
装置を整備する必要があります。これには多額の費用がかかりますので、保健
所、学校、病院などの公共施設、保健医療施設では一気に建物内を禁煙にす
るところが増えてきました。わがあいち健康プラザでも平成16年6月1日から建
物内を禁煙にすることにしました。ただし、宿泊館の客室内は不特定多数の人
が利用するのでなく、特定の人が利用者責任で利用するために、禁煙フロアー
を設置するにとどめ、客室内の喫煙は黙認することにしました。その後に行った
客室の灰皿利用状況調査では喫煙可能な客室に宿泊した人の約30%が喫煙
していることがわかりました。建物内禁煙は三段跳びでは、ステップです。

 建物内を禁煙にすると新たな問題が生じました。病院でも建物内を禁煙にす
ると、出入り口近くに設置された灰皿の近くで喫煙する人が増え、傍を通る人
に迷惑をかけ、かえって喫煙が目立つようになりました。あいち健康プラザで
も建物内を禁煙にして、外部(宿泊館の玄関から約10メートル離れた柱の影)
に灰皿を設置したところ、通行者にも迷惑がかかり、逆に喫煙が目立つように
なってしまいました。そのためか、昨年の秋には「健康の森公園は平成17年
4月から禁煙になっているのに、あいち健康プラザの敷地内で喫煙しているの
はおかしいではないか」という投書があり、急遽喫煙場所の移動、敷地内禁煙
などを検討しました。結局、他に適当な喫煙場所がなく(バス停の近くへ移動
するのは改悪!)、消去法的に敷地内禁煙に踏み切らざるを得ないのではない
かと思いました。そこで、本年2月の管理会議で敷地内禁煙化を提案しましと
ころ、敷地内禁煙により宿泊館の利用者(特に、大小の会議室)が減り、減収
になる恐れがあるから反対だと言う意見が強く、敷地内禁煙は将来の課題とし
て見送られてしまいました。当面は会議室利用者に対して、敷地内を禁煙にし
た場合にも引き続き利用してもらえるかどうかに関するアンケート調査を行う
こととして、とりあえず4月から禁煙フロアーをもう1階増やすことにしました
(現在は7階と8階が禁煙フロアー)。

 平成20年度からの抜本的な保健医療制度改革の一環として、厚生労働省
に「標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会」が設置されましたが、
平成18年6月19日に開催された第2回検討会において、「市町村などからの
委託を受けて健診や保健指導を実施する機関(研修機関も含まれる)は、建
物、施設、専門スタッフが整備されていることに加えて、敷地内禁煙が要求さ
れる」ことに決まりました。これを受けて、健康づくり振興事業団(あいち健康
プラザ及び総合健診センター)も敷地内禁煙に踏み切らざるをえなくなり、平
成19年1月1日から実施することになりました。その後に行った会議室利用
者を対象としたアンケート調査で、敷地内禁煙を理由に会議室を利用しない
という利用者は皆無に近く、収入面での危惧はほとんどなくなり、やれやれと
思っています。敷地内禁煙は三段跳びのジャンプです。

 ただし、敷地内禁煙に伴う問題点もいくつかあります。その1つは喫煙者が
敷地外の道路や他の施設の敷地へ入って喫煙する可能性もあり、防災、美
化(吸殻投棄)などの問題が生じる恐れがあります。他の深刻な問題は、あい
ち健康プラザ(業務委託先の職員も含む)の職員にもごく少数ですが、喫煙者
がいることです。おそらく、敷地内禁煙を契機として禁煙に踏み切る職員も居
るでしょうが、依存性の強い喫煙者も居ることでしょうから、禁煙に関するカ
ウンセリングや禁煙治療支援などを強化する必要があります。

 さて、毎年12月になると喪中ハガキが届きますが、今年も「死んでも、たば
こは止めない」と言っていた、まだ60歳台の元同僚の奥様からの喪中ハガ
キが届きました。死因はたばこ関連疾患とは限りませんが、その可能性は高
く、亡くなられた喫煙者は悔いを残さずに亡くなられたか、病気になってから
後悔されたか、私ももう少し強く禁煙を勧めるべきではなかったかと複雑な
心境になりました。合掌