ビタミンCの風邪予防作用(2007年2月1日)

「ビタミンCの風邪予防作用」

          健康科学総合センター長 富永祐民


 風邪の予防は健康づくりと生活習慣病予防と直接関係はないかも知れません
が、厳寒期は風邪を引きやすいので、今回は飛び入りでビタミンCの風邪予防
作用をめぐる話を紹介させていただきます。 

 ノーベル賞を2回受賞したライナス・ポーリング博士は1970年に「ビタミンCと
風邪」という本を発刊し、1日に5グラムから10グラムという大量のビタミンCを
摂取すれば風邪が予防でき、罹っても軽くすませることができると主張しました。
これは医学界に議論を呼び、ポーリング博士のビタミンC大量療法による風邪
の予防作用説を検証する動きが生じました。当時私は米国メリーランド大学に
留学中で大規模な臨床試験の統計センターで仕事をしていましたが、同大学病
院内科の感染症グループの医師がポーリング博士の仮説を検証するために臨
床試験を計画しているので、統計学的なデータ処理を手伝ってほしいと依頼さ
れました。

 この臨床試験は刑務所に収容されたボランティアー囚人を対象とし、治療方
法と臨床試験の方法について十分な説明をして同意を得た上で、二重盲験法
(医師も患者も実薬と偽薬のどちらかわからないようにして薬物を使用する方
法)で、1日3グラムのビタミンCと偽薬としてビタミンCと同じように酸っぱい味
のクエン酸をカプセルに入れて投与しました。風邪ウイルス(風邪のウイルスは
200種類以上ありますが、その内のリノウイルス44型)を鼻から接種し、その
後1週間にわたり試験薬を投与しました。あらかじめこのウイルスの抗体を持っ
ていない対象者のみを選定していましたので、全員が風邪にかかりました。

 臨床試験終了後に2群の鼻汁や血清中のウイルス量、抗体量等を比較した
結果、ウイルス量や抗体量に差はみられませんでしたが、鼻汁、鼻づまり、鼻
炎などの上気道の炎症症状はビタミンC群で明らかに低くなっており、統計学
的にも有意になっていました。

 この臨床試験の結果から、私は風邪を引いたかなと思ったらすぐに大量(1日
に3-5グラム)のビタミンCの錠剤をトローチのように舐めています。風邪を引
いたかなと思った初日から飲み始めると、不思議に風邪が悪化せず消えてし
まうことが多いのですが、手元にビタミンCが無く、1,2日後に飲み始めた場
合には全く効かないようでした。これはウイルスの繁殖力が強く、1日も経てば
ウイルス量は千倍も増えてしまうので、ビタミンCの手に負えないようです。

 国立がんセンターがん予防検診研究センターの津金昌一郎部長らは胃がん
予防のために、秋田県の地域住民を対象としてビタミンCを長期間投与する研
究を行っていますが、ビタミンCを投与したグループでは風邪引きの頻度が有
意に低くなっていることを認めています。

 一般に、ビタミンCはウイルスや細菌感染に対する抵抗力を強めるとみられ
ていますから、日頃からビタミンCかビタミンCに富む果物や野菜類を多量に
摂取しておくと、感染症の予防、がんの予防、美肌にも役立つと考えられます。

 ちなみに、風邪の予防方法としては、手洗い(特に、帰宅後、食事前)、うが
い(緑茶も有効)、風邪やインフルエンザの流行期には不必要に人混みに出
ない、過労を避ける、風邪を引いてしまった時は無理をせず身体を休め、たっ
ぷり水分をとることが重要です。発熱はウイルスや細菌を殺すための、咳も痰
や粘液を排出するための生体の防御反応ですから、不必要に風邪薬を飲ま
ない方がよいと思います。ただし、高齢者や幼児では抵抗力が低いので、風
邪といえども油断はできません。