コーヒーの糖尿病予防作用(2007年2月16日)

「コーヒーの糖尿病予防作用」

          健康科学総合センター長 富永祐民


 本欄の19話(2005年4月1日号)で「コーヒーのがん予防作用」を紹介致しま
した。簡単に復習しますと、コーヒーには200-300種類の抗酸化物質が含ま
れており、1杯のホットコーヒーの抗酸化作用はレモン3個分に相当する程強い
のです。数年前に愛知県がんセンター研究所疫学・予防部で行った疫学研究
によると、コーヒーを毎日飲む人ではほとんど飲まない人に比べて、胃がんと大
腸がん(特に、直腸がん)に罹る率(リスク)が半減していることがわかりました。
2005年には国内の4つの研究グループが相前後してコーヒーを毎日飲む人で
はほとんど飲まない人に比べて肝臓がんリスクが半減していると報告しました。
さらに、当時すでに九州大学大学院医学研究科予防医学教室では耐糖能異常
を示した男性自衛官を対象として疫学研究を行い、コーヒーを毎日飲む者では
食後の血糖上昇が抑制され、2型糖尿病への進展が抑制される可能性がある
と報告しています。今回はコーヒーと2型糖尿病の関係に関するいくつかの研
究結果を紹介します。

 オランダのファン・ダム博士らは2005年1月までに報告されたコーヒーと2
型糖尿病に関する論文を系統的に調べ、16件の論文を見つけました。その内
の大規模なコホート研究(追跡研究)9件の全対象者(約193,000人、その
内2型糖尿病の新規発生者約8,400人)のデータをプールしてコーヒー摂取
量(4段階に分類)と2型糖尿病リスクの関係を分析しました。その結果、コー
ヒー摂取量が最も少ない(1日に0-2杯)の群に比べて、最もよく摂取してい
た(1日に6-7杯以上)群の2型糖尿病リスクは0.65倍に低下していました。
コーヒーの摂取量が1日に4-6杯の群でも2型糖尿病リスクは0.72倍に低
下していました。コホート研究以外の断面的な研究でも、コーヒーをよく摂取す
る人では高血糖症を合併している率が低くなっていました。

 その後、わが国で行われた研究でも国立医療センターの野田光彦部長は虎
ノ門病院に勤務していた時に東京都葛飾区の住民を対象としてコーヒー摂取と
糖尿病との関係を調べ、コーヒー摂取が週に1回未満の人に比べて、週に5回
以上の人では2型糖尿病リスクは0.61倍に低下していることを明らかにして
います(出典:2006年2月12日の日経新聞)。日本人でコーヒーを1日に6-
7杯も飲む人は少ないと思いますが、1日に2-3杯飲んでも2型糖尿病の予防
効果があるようです。

 コーヒーをのむとなぜ2型糖尿病に罹りにくいのかという理由はよくわかりま
せんが、コーヒーにはカフェインが含まれていますから、交感神経を刺激し、エ
ネルギー消費を高め、脂肪の分解を促進する効果があるためではないかと推
測されています。それなら、コーヒーだけでなく、緑茶や紅茶にも同じ効果があ
りそうですが、実際に大阪大学医学部公衆衛生学教室の磯博康教授らは日本
の25地域で行われた疫学研究から、緑茶をほとんど飲まない人に比べて緑茶
を毎日飲む人では2型糖尿病リスクが0.6-0.8倍に低下していること、紅茶
やウーロン茶にも僅かながら2型糖尿病の予防効果があることを認めています。
磯教授らの研究でもコーヒーをほとんど飲まない人に比べて、コーヒーを1日に
3杯以上飲む人では2型糖尿病リスクが0.63倍に低下していることを認めて
います。また、磯教授らは何らかの飲料摂取によるカフェインの総摂取量によ
り5群に分けて2型糖尿病リスクを計算していますが、最も摂取量が少ない群
(平均57mg/日)に比べて、最も摂取量の多い群(平均416mg/日)では2
型糖尿病リスクが0.67倍に低下していること、この関係は女性と過体重(BM
Iが25以上)の男性でより明らかであったと報告しています。

 今回ご紹介した研究結果は、コーヒー好きで、緑茶もよく飲む筆者にとって
は福音です。読者の皆様もゆっくりした雰囲気でコーヒーや緑茶をお楽しみ下
さい。