たばこ対策の歩みと将来の課題(2007年3月16日)

「たばこ対策の歩みと将来の課題」

          健康科学総合センター長 富永祐民


たばこ対策は防煙対策(未成年者の喫煙防止対策)、禁煙対策(禁煙支援)、
分煙対策(非喫煙者の保護対策)の3つに分かれますが、最近最も進展してい
るのは分煙対策です。これは平成15年5月に健康増進法が制定され、法第2
5条で学校、病院、公共施設、その他不特定多数の人が集まる諸施設などで
は、閉鎖した喫煙室を設けるか建物内を全面禁煙にするなどの厳しい対策が
要求されたからです。名古屋市ではバス停も禁煙になっていますし、人通りの
多い道路では歩行喫煙が禁止され、違反者には2000円の罰金が科せられ
るようになりました。人通りの多い歩道のみでなく、全ての道路、公園など、不
特定多数の人々が集まる場所は全て禁煙にすべきだと思います。乗り物はほ
とんど全て禁煙になっています。東海道新幹線も徐々に禁煙車が増え、現在
では16両中12両(75%)が禁煙となっています。さらに、新しいN700系車
両から全席が禁煙となり、別にトイレのような喫煙室が設置されます。東海地
方では全国に先駆けて5月からタクシー協会に加盟している全タクシー会社の
延べ8000台が禁煙となります。現在分煙対策が最も遅れているのは飲食店、
ホテルなどで、積極的な行政指導が望まれます。

 あいち健康プラザでは平成9年の開館時から1階とB1に立派な喫煙室が設
けられていましたが、健康増進法が制定されたこともあり、平成16年6月1日
から建物内は完全禁煙になりました。しかし、宿泊館の入り口近くに灰皿が設
置されたため、かえって喫煙者が目立ち、非喫煙者から苦情が寄せられまし
た。その後、あいち健康の森公園が禁煙となったこともあり、今年の1月1日か
ら究極の敷地内禁煙に踏み切りました。これについては昨年12月16日号の
E-ニュースで予告しましたが、E-ニュースの読者から高校の敷地内が全面
禁煙になってから喫煙教師が正門の近くで喫煙するようになり、登下校する生
徒に悪い影響を与えるので、これを禁止するように働きかけてほしいとか、逆
にあいち健康プラザを利用している喫煙者から他の利用者に迷惑がかからな
いところに灰皿を設置してほしいというような要望も寄せられました。最近日本
対がん協会の機関誌(2月1日号の対がん協会報)でも愛知県支部(総合健
診センター)の敷地内とあいち健康プラザの敷地内が1月1日から禁煙になっ
たこと、特にどのような手順で敷地内禁煙に踏み切ったか紹介されています。

 最近多くの学校で敷地内が禁煙になったこともあり、中学生、高校生の喫煙
率が著明に低下しています。この原因は学校の敷地内禁煙の普及により喫
煙しにくくなったことだけでなく、中学・高校生の小遣いに占めるたばこ代と携
帯電話の使用料との兼ね合いも影響しているのかもしれません。来年からは
年齢証明を要する「たばこカード」がないと自動販売機でたばこが買えなくなり
ますので、未成年者の喫煙率は一段と低下するものと思われます。さらに、た
ばこ価格が欧米先進国並みに一箱数百円になると未成年者の喫煙率はもっ
と低下するものと思われます。

 さて、最後に禁煙対策ですが、これについては昨年4月からニコチン依存性
が強い喫煙者に対する禁煙治療が保険適用になりました。昨年6月からはニ
コチンパッチも薬価基準に登載され保険薬になりました。禁煙した人の多くは
ニコチンパッチなどの禁煙補助剤を使わずに、自分の健康のことを考えたり、
たばこを吸う環境が悪くなってきたこと、たばこ代が上がったことなどにより禁
煙に踏み切っています。衣浦東部保健所の禁煙クリニックの経験によると、1
年後の禁煙成功率はニコチンパッチを使用した群で51.4%、使用しなかっ
た群で51.7%と両群間に差がなく、医師、保健師による認知療法(認知の歪
みを修正する療法)の重要性を示しています。今後は広く健診や保健指導の
際にも喫煙状況を調べ、喫煙者に対しては禁煙を勧め、禁煙希望者には禁煙
支援を行う必要があります。

 一般に、医師などの保健医療従事者の喫煙率は一般人の約半分と低率で
すが、これはたばこの害を一般人以上に知っているからだと思われます。した
がいまして、今後は未成年者も含めて一般の人々に対して、いろいろな方法で
喫煙の害と禁煙の益に関する健康教育を推進する必要があります。あいち健
康プラザでも来館者や利用者に対してもっと積極的にたばこに関する健康教
育を行うべきだと思っています。