ABO血液型は性格や体質と関連がありますか?(2009/11/1)

「ABO血液型は性格や体質と関連がありますか?」

              健康科学総合センター センター長 高橋利忠  

 HLA(白血球抗原)の多様性と免疫力との関連を以前紹介しましたが(8月
1日)、赤血球にもABO型をはじめ数十種類の血液型があります。ABO血液
型は遺伝子レベルでは70を超える多様性がありますが、血液型としてはA,
B,O(Hとも呼ばれる)の3型に大別されます。日本では医療関係者のみなら
ず、一般の方々にも関心がもたれており、女性週刊誌にもABO型による性
格判断等の記事がしばしば掲載されます。 

 ABO型は20世紀初頭、オーストリアのノーベル賞受賞者であるラントスタ
イナー博士により見つけられました。日本人でのA,O,B,AB型の割合は各
々約4,3,2,1ですが、白人ではO型とA型が約45,40%で、残りの10%
がB型で、4%がAB型です。

 東洋人にはB型が多く、3割弱ですが、東洋人が移住したと推定されている
アメリカ先住民では、B型は4%と低く、一方、O型の頻度は約8割ときわめ
て高い割合を占めています。しかし、どうして民族間でこのような大きな違い
があるのか明らかにされていません。

 ABO型の抗原は糖鎖で、砂糖に近い物質です。基本構造に、Nアセチルガ
ラクトサミンが付いていると、A型、ガラクトースが付いているとB型となり、一
方糖鎖が付いていないとO型となります。これら抗原はA、B、O型の遺伝子
が各々働いてつくられますが、遺伝子は糖鎖そのものを作るのではなく、各々
の糖鎖を付加する酵素を作ります。しかし、O型の遺伝子は出来損ないの酵
素しか作れず、そのため糖鎖を付加することができません。それゆえ、O型に
は抗原となる糖鎖が付いていないわけです。
 
 輸血の際にはABO型を調べることが不可欠ですが、その理由はA型の人
はB型の赤血球を凝集する抗B抗体を、B型の人は抗A抗体を、またO型の
人は両抗体を持っているからです。しかし、AB型の人は抗体を持っていませ
ん。また、O型は抗原となる糖鎖をもっていないため、O型に対す抗体は存在
しません。消化管にはA型やB型抗原とよく似た抗原を持った細菌が常在して
おり、それらにより自然に免疫され、このような抗体が正常な人にも産生され
ているのではないかと想像されています。

 ところで、ABO抗原は赤血球以外にも種々の細胞で発現しており、何らか
の機能を果たしているのではないかと考えられていますが、ここには細菌感
染とABO抗原との関連に関する研究成果を紹介いたします。
 
 以前紹介いたしましたように(4月1日)、ピロリ菌は胃潰瘍や胃がんと深い
関連がありますが、ピロリ菌が胃の粘膜に感染する際には、まず粘膜に接着
する必要があります。日本人のピロリ菌を調べたところ、9割以上がA、B、O
いずれの抗原にも接着しましたが、人口の多くがO型であるペルーのピロリ菌
は、約6割がO型抗原により強く接着することがわかりました。このようにAB
O抗原はピロリ菌の感染に関連している可能性が示されましたが、他の細菌
(コレラ、破傷風、ボツリヌス、乳酸菌など)の感染に関しても、同様にABO抗
原との関連性が報告されています。

 読者の多くは、性格との関連性に興味を持っておられると思いますが、残念
ながら現時点では脳の活動とABO抗原との関連を科学的に証明した論文は
発表されていません。